モーターのしくみ
右ねじの法則
電線に電流を流すと、その周囲に磁界が発生します。
上記の図を見て頂ければ解るように、電流の向きと、磁界の向きが、右ねじの進む向き(電流)と右ねじを回す向き(磁界) に一致するのでこう呼ばれるようです。
アンペール(フランス)さんが発見したことで、アンペア右ねじの法則とも言います。
電流によって発生する磁界の強さは、電線を流れる電流が大きいほど強くなります。
また、電線から近いほど磁界の強さは高まります。
H[磁界の強さ]=I[電流]/2πr[電線からの半径]
さてさて、「導体に電流を流せば磁界が発生する」
ということですが、電線を巻いてコイル(ソレノイドコイルとも言います)を作った場合どのような方向の磁界が発生するのでしょうか?
この場合は小さな右ねじの法則の集まりという事で下図のようになります。
右手を軽く握ってみて、親指がN極他の指は電流の向き、と覚えると良いようです。テストに出ますYO。
ところで磁束の方向がS→Nだと変じゃないか?N→Sへ行くもんじゃないか?
と図を描きながら思ったのですが、
Nから出た磁束がSに戻ってループをしているのでは、と考え直して納得しました。
このコイルによる「起磁力」は、電流が大きいほど、巻数が多いほど大きくなります
フレミング左手の法則
フレミング左手の法則とはジョン・フレミングさん(イギリス)によって考案されました。
磁界の中で導体に電流が流れた時、導体に発生する電磁力(力)の関係をわかりやすく左手で覚えるものです。
電磁力 の方向を示します。
フレミング右手の法則
フレミング右手の法則とはジョン・フレミングさん(イギリス)によって考案されました。
磁界の中で導体がある方向に動いた時(運動)、導体に発生する起電力の方向をわかりやすく右手で覚えるものです。
電磁誘導の方向を示します。
電磁力
電磁力とは磁界の中で導体に電流が流れた時、導体に発生する電磁力(力)のことを指します。
方向はフレミング左手の法則で表せられ、下図ならば導体を上に押し上げようとする力が働きます。
電流が流れることで、力が発生するとはまさにモーターの原理ですね。発見したのはファラデー博士で電磁誘導を発見するよりも10年も前だそうです。
またこの電磁力は別名ローレンツ力とも言います。 発生する電磁力の大きさは
F[電磁力の大きさ]=B[磁束密度]L[導体の長さ]I[電流]
で表します。
「導体の長さ」が電磁力の大きさと関係あるという事は、他の条件が同じならローターが長いほど大きな力が発生するということです。
そういえば、昔のモーターに比べて最近のモーターはローターが長くなっています。
昔のローターは直径が大きく、長さが短かったです。今は真逆。同じ容量で小さくなった理由もそこにあるのでしょう。
長いと巻替やりにくいんですがね。。。
電磁誘導
電磁誘導とは磁束が移動することで導体に電圧が発生し電流が流れる現象を言います。
その時に発生する誘導起電力の方向はフレミング右手の法則で表せられます。
フレミング右手は電磁誘導で電流の方向を指し、フレミング左手では電磁力で力の方向を指すのでややこしいですね。
ただ両方とも、「親指=力」「人差し指=磁界」「中指=電流」なのが救い?
上図のようにN極をコイルの中に入れると、コイル内の磁束が増加することになります。
そうなるとコイル内ではその磁束を打ち消す方向の磁極が発生し、電流が流れます。
入れたコイルを出す場合には、減少する磁束を打ち消すような方向の磁極が発生し、電流が流れますので、入れる時、出す時では発生する起電力の方向は逆になります。
家に入ろうとすれば拒まれ、帰ろうとすれば引き止められる。まるでB型です。
まあつまり交流が出来たということですね。この繰り返しを一秒間に何回したかが周波数になります。
電流が流れることを発見したのはファラデーさん(イギリス)で、逆向きに流れることを説明したのはレンツさん(ドイツ)です。
上図の「力」の方向に導体を動かしても導体に電流が流れます。
その際にフレミング右手の法則で方向を確認出来ます。電流はちょうど 電磁力と逆の方向になるのですね。
発生する起電力の大きさは
e[誘導起電力]=B[磁束密度]L[導体の長さ]V[導体の移動速度]
となります。 速く動くほど大きな電力が発生するようです。
つまり風力発電では羽がびゅんびゅん回れば最高なんですねぇ
しかーしそれには機械的問題があるようで、実際の風力発電機は、風速が25メートルを超えると、
風を逃がすように羽が傾くそうな。
直流モーターの原理
世界で初めて実用的なモーターを開発したのはフランク・スプレイグさんで、これは直流モーターでした。
直流モーターの原理は単純でフレミング左手の法則で説明出来ます。
しかし原理は単純でも整流子やブラシが必要になり、三相誘導電動機に比べて機械的構造は複雑になります。
上図を見て下さい。
図のように磁界の方向と電流の方向が決まっていますので、あとはフレミング左手の法則をあてはめてみると回転方向が決まります。
回転を始めてコイルが1/4回転した時(ブラシと直角の時)にブラシは整流子(コミュテーター)から外れてしまい電流の流れない状態になります。ここを慣性で通り過ぎ1/2回転した時には前回と同じ方向の電流が流れ、磁界の方向は変わっていないので同じ回転方向で回り続ける事が出来るのです。
これをブラシ(炭素で出来ているのでカーボンブラシとも言います)の側ではなく、コイルの側から観察しますと、 上図の左側のコイルに流れる電流は1/2回転した後(右に移動した後)には逆向きに流れます。 これは交流のサイクル(サインカーブ)と同じ事なのです。
つまり直流モーターは整流器を通す事で直流を交流に変換しているのだとも言えます。
直流発電機は直流モーターと構造が全く同じです。
回転を与えてやるとフレミング右手の法則に従う電磁誘導が起こり、直流電圧を取り出す事が出来ます。(ただしコミュテーターの数を増やさないと脈動の激しい直流電圧になる)
もし発電時、整流器ではなく、スリップリングで電圧を取り出すなら、整流されていない交流電圧を取り出す事も出来るのです。
電機子モーターとは
直流モーターは界磁の励磁方法で色々な種類があるのですが、 下図はその中の直巻式と呼ばれるモノです
面白い事にこの巻き方だと単相交流で回す事が出来ます。
直流電圧を印可した場合では磁界の方向が変わらずに電流の方向も変わらない事で同じ回転方向で回ることが出来ました。
交流電圧を印可した場合では1/2回転毎に磁界の方向と電流の方向が変わってしまうので、回転方向が同じになり回り続けるのです!
このタイプは特に電機子モーターと呼ばれていて100V電源で使われているドリルやサンダーなどの高トルク工具に良く使われています。
アラゴの円盤
アラゴの円盤というのは、磁性を持たないアルミ(銅)の円盤が磁石につられて回転する不思議の事です。
物理学者フランソワ・アラゴーさん(フランス)が1824年に発見したらしいです。
概念図は以下のようになります。
- 磁石を動かす事で、円盤上に電力が誘導され
- フレミング右手の法則に従う向きの電流が流れ(つまり電磁誘導)
- 流れた電流を切るように磁束が動く(磁石を動かしている)のでフレミング左手の法則に従う電磁力が働き、
- 円盤が回転します
注目なのは必ず遅れて回るということで(もし同じ速度なら磁束は電流に対して移動していないと同じ事になる)これが誘導モーターの「すべり」になります。
三相誘導モーターの原理
-----なぜ回転するか〜回転磁界-----
三相誘導モーターは三相交流のもつずれた位相を利用して回転します。
時間的に1/3ずれて,空間的に120°ずれた三相交流は回転磁界をつくるのにうってつけなのです。 バナナフィッシュにもうってつけの日なのです(なんてな…)
アラゴの円盤では磁石を手で動かすことで磁束を回転させ,うず電流(電磁誘導)を発生させていました。
実際のモーターでは磁石を動かすのではなく,磁極自体に回転してもらい,ローターに電磁力を起こさせます。
上図は2P(ツーポールとか二極と言います。周波数の1サイクルに対して1相に磁極が2つ出来るコイルです)の三相誘導モーターステーターコイルの概略図です。
120°ずれた位置にU-V-Wが並び、U-U'でU相のコイルを,V-V'でV相のコイルを,W-W'相でW相のコイルを表しています。
'(ダッシュ)は対角に向かい合わせて入っているコイルを意味していて、流れる電流の向きが逆になります(出た電流は戻らないといけませんよね?)
上図のサインカーブはそれぞれのコイルに流れる電流を表しています。
左から右へは時間の流れなのですが,これを4カ所で時間を区切ってコイルに流れる電流を輪切りにしたのが下図です。
一番左側の円では右ねじの法則による合成磁界がナナメ左上に向かって出ています。
この磁極が時間の経過とともに回転しているのがわかりますよね?このことを回転磁界と言います。
極が2つのこのモデルに60Hzの三相交流を流すと60(一秒間の回転数)×60=3600rpm(revolution per minute)で回転します。
さて,かご型ローター(三相かご型モーターの項で説明しています)の回りを磁界が回るということは、導体が磁束を切ると同義になりますので,ローター導体にフレミング右手の法則に従う電磁誘導が起きます。
そして磁束の中(回転磁界)で電流が流れるという事はフレミング左手の法則に従う電磁力が発生し,その力の方向にローターは回転するのです。
それは結果的に回転磁界と同じ方向になり、回転磁界はローターより早く回ることで常に磁束を切り続け、回転し続けるという素晴らしい循環が起きるのです!ジークジオン!
単相誘導モーターの原理
-----交番磁界がなんで回転すんねん-----
三相モーターの場合は三相交流の回転磁界によってローターが回ります。
ところが日本の一般的な家庭で使われているのは100Vの単相交流です。
単相という交番磁界がなぜ回転するのでしょうか?
ところで、世界で初めて回転した交流モーターは大テスラ(偉大な人物なので「大」を付けています)が発明した二相モーターです。
二相発電機からの交流で二相モーターを回転させたようです。
この二相モーターというのは、コンデンサ・ラン単相モーターと酷似しています。
位相のズレをコンデンサで起こすか、そもそも位相の違う二相を使うかの違いだからです。
二相から三相→単相と実用化されていったのがモーターの歴史なのでしょうかね?
お詳しい方がいらしたらお便りお待ちしております。
現在廃れた二相モーターはさておき(二相発電機が無いからです)単相モーターの回る原理です。(単相誘導モーターのローターは三相かご型モーターで説明したのと同じ理屈のかご型ローターを使用しています)
さて上図は2極の単相モーターの概略図です。
内側の円がかご型ローターで、外周にそってたくさんある円が導体になります。
N、Sとありますのが、単相モーターのステーターコイルになります。
このコイルに電流を流しますと図のようにローター内にN極S極が発生します。
この発生した外部磁界は交流のサイクルによって上下するだけで回転はしませんのでこれだけではローターは回りません。
そこで初めだけローターを手で回してやります。
するとあら不思議。ローターはそのままずっと回り続けます。
実用されている単相モーターはこの最初の始動の方法によって名称(種類)が変わります。主に
分相始動型
コンデンサ始動型
コンデンサラン型などがあります。
さてこの始動の話は個別にいたしますので、ここではなぜ最初に回転を加えてやると回り続けるのか? という事を説明します。
上図のローター導体を一部拡大してみた右側を見て下さい。 この導体は磁界の中を移動したため(磁束を切ることになり)フレミング右手の法則に従う誘導電流が流れます。
この誘導電流は反対側(下側)の導体では逆方向に流れますよね。
上左図は導体に誘導電流が発生したために、右ねじの法則に従う磁界ができ、それらが合成されて左から右側へ向かう磁界を発生させた図です。
下右図は半サイクル後にステーターコイルの外部磁界が反転して、それにともない誘導電流による磁界も反転した図です。 これはつまり
「ローターが回ることによってローター導体に誘導電流が流れ、ローターの中心に磁界が生じる。この磁界は、外部磁界に対して空間的にも時間的にもずれを生じており、これが外部磁界と合成されることによって回転磁界が生成される」
ということなのです。
上図のサインカーブで表しているように、外部磁界と誘導された磁界のずれは時間的に1/4サイクルずれて生成されます。
空間的に90°ずれて、時間的に1/4サイクルずれることで、時間経過にしたがって回転する磁界が生成されるということなのです。
両方の磁界を合成して考えた場合、1,2,3,4,5,,,と続く交流サイクルに合わせてローター中心から見た磁界の方向は↑→↓←となり,見事に回転磁界となるのです。
初めに回転を加えることで,誘導電流による回転磁界が生じて,ローターはそれより遅れて回ることで,フレミング左手の法則に従う電磁力が,ローター導体にかかり続け、同じ方向に回り続けるということなのです。
三相かご型モーター
構造
もっとも一般的なモーターであって、モーターといえばこの機種を指すほど、です。
三相交流を電源として、ほぼ一定速度で回転します。
構造はいたって簡単で以下に略図と名称を示します。
- ステーター(固定子)鉄心
- ステーター(固定子)コイル
- ローター(回転子)
- 出力軸
- 負荷側ベアリング
- 反負荷側ベアリング
- 負荷側ブラケット
- 反負荷側ブラケット
- 冷却ファン
- ファンカバー
※修理屋では1,2とケーシングをまとめてステーターとも言います
特徴
かご型の特徴とはもちろん「かご」にあります。
なぜ「かご」と呼ばれるかといいますとローターにその秘密があります。
下は一般的なアルミダイカストのローターの写真です。
鉄と書いているのは積層鉄心のことで、四角で囲んだ部分は何枚もの薄いケイ素鋼板の集まりです。
積層にすることで余計なうず電流の発生を防いで効率を良くしています。
回転力を生み出しているのはアルミの部分です。
この部分が電磁力を利用して、回転磁界につられて回ります。
このアルミの部分だけ抜き出して解り易い?図にすると以下のようになります。
こう見ますとまるでカゴ、、、というかカゴにしか見えませんよね?
ですから「かご型モーター」というようです。
電流の流れるバーの部分はアルミが多いですが、銅バーを使用しているタイプもあります。
バーを端絡環と呼ばれるリングでつなげることで、環の部分は電流がニュートラルになります。
写真のA-A'の部分の断面は下のようになります。
上の断面図の導体の形状は「二重かご型」といいます。
この導体の断面の形状でモーターのトルク特性が大きく変わってきます。
「普通かご型」
「深溝型」「くさび型」などがあります。
始動トルクの小さい普通かご型を使っているのは小型機のみのようです。
一般的なのはアルミダイカストに特殊二重かご型(普通かごと二重かごが交互に入る)です
性能
三相かご型モーターの性能として
電源電圧:200/220V以上〜 50/60Hz
定格出力:数w〜数千kw
回転速度は n=120f[周波数]/p[極数]×(1-s[すべり]) となります。
すべりは%で表しまして、おおむね1〜10%程度になり、容量が大きくなる程すべりは小さくなります。
効率も%で表しまして、おおむね82〜96%程度、容量が大きくなる程効率は良くなります。
コンデンサ始動式、分相始動式単相モーター
構造
単相モーターは起動方法,構造によっていくつかの種類に分かれています。
分相始動式単相モーターの場合ローターはかご型を使います。これは三相かご型のローターと全く同じ構造です。
巻線は単相の主巻線にプラス補助として始動用巻線を別に巻いてあります。
- ステーター(固定子)鉄心
- ステーター(固定子)コイル
- 遠心力スイッチ
- コンデンサ
特徴
特徴はその始動方法にあります。
単相モーター自体の回転するしくみは単相誘導モーターの原理にて説明しておりますので,ここでは省略します。 要約しますと単相モーターというものは始めに回転力を外部から与えてやれば回り続けるということです。 そこでこの分相始動式始動といいますのは,連続運転用の磁界をつくるコイル(主コイル)とは別に始動の為だけのコイル(始動コイル)をステーター鉄心内に巻いてあります。そして始動コイルには直列にコンデンサを入れています。
始動コイルは主コイルに対して90°空間的にずれた位置にあり、始動コイルに流れる電流はコンデンサを通す事で、時間的に1/4サイクルずれて流れる為 単相誘導モーターの原理で説明したように回転磁界が発生します。
主コイルは始めに回転を与えてやれば回転し続けるために,そうなると補助巻線は必要がなくなります。そこで機械的に動作する遠心力スイッチを設置していて,それは回転が定速に達すると始動回路部分を切るために働きます。
始動用コイルに直列にコンデンサが入ることでコンデンサ始動式というようです。下は実際の遠心力スイッチ(ガバナスイッチ)の写真です。
※写真はフランス製電動石臼用単相モーターです。
もっと小型のものでは始動用コンデンサの無い分相始動式もあります。
これはコンデンサを利用せずにコイルのもつ誘導リアクタンスの差を利用して回転磁界をつくります。
といいますのはコイルの抵抗といえるインピーダンス(誘導リアクタンス)には電流の流れを早める(位相を変える)働きがあるからです。
この位相の大きさはコイルの自己インダクタンスによって変わってきます。自己インダクタンスはコイルの巻数と線径が関わってくるので,
つまり始動コイルに(主コイルに対して)線径の大きな銅線を少ない巻数で巻いてやると主コイルに流れる電流と始動コイルに流れる電流の位相差が出来るのです。
始動コイルの位置を空間的に90°ずらして入れておけば、磁界は楕円軌道のややいびつな回転磁界となり,モーターは回り始めるということです。
尚この始動コイルは非常に焼け易いので始動負荷が(一時的にでも)重たかったりすると,あっという間に焼損してしまいますので注意!
単相モーターは他にもコンデンサに電圧が入りっぱなしのコンデンサモーターや、くま取りコイル始動式があります。
性能
電源電圧:100-200V 50/60Hz
定格出力:100w〜750w
始動トルクは大きく200〜300%
始動電流は400〜500%
始動トルクの割に始動電流は少なめらしい
コンデンサの無い,分相始動式の場合は 電源電圧:100-200V 50/60Hz
定格出力:20w〜250w
始動トルク125〜200%
始動電流は500〜600%
こちらは始動トルクが小さく,コンデンサ式に比べて始動電流が大きくなります。